学会について

理事長のご挨拶

神奈川県感染症医学会 理事長 石ヶ坪良明

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 伝統ある神奈川県感染症医学会理事長に推挙され大変光栄に思っております。今後は、初代理事長(当時の名称は会長)の小田切繁樹先生をはじめとし、これまで、神奈川県感染症医学会のためにご尽力を賜った先生方の努力に報いるためにも、神奈川感染症医学会をさらに発展させていくべく全力を注ぎたいと思います。
 本会は、昭和52年に当時の横浜市大第一内科教授の福嶋幸吉先生が中心となり、聖マリアンナ大学の飯島教授、東海大学の大越教授などが、神奈川県における感染症分野の啓発をするために立ち上げられた会と聞いております。当初は、同好会的学術集会という名称のもとに運営されていましたが、平成11年に神奈川県医学会の分科会である神奈川県感染症医学会という現在の名称に変更されました。
 実は、平成11年9月に第70回神奈川県感染症医学会記念大会の当番会長を担当しましたが、同会には本会への参加者105名のほか、神奈川若手感染症研究会および市民(県民)講座の参加者を含めると250名を超える参加者を迎えることができました。
 このような実績をもとに、今後も、これまでの多くの先輩の諸先生方が築かれてきた神奈川県感染症医学会の伝統を継承しながら、若手医師や市民(県民)に対して本会の役割を啓発することにより、さらに多くの若手医師の参加者を募り、市民(県民)の皆様に神奈川県感染症医学会の役割についてご理解をいただくように努力をして参りたいと思います。
 神奈川県には、本会をはじめ、神奈川県若手感染症研究会、神奈川県HIV中核拠点病院等連絡協議会主催の関連研究会をはじめとした、県内すべての地域の医療関係者を対象にした多数の感染症関連の研究会があります。そのなかで、幅広く感染症領域をカバーしている本会が中心となり、他の感染症研究会とも共同して、感染症をfirst specialtyとする若手医師の育成とともに、second specialty とする医師への感染症の啓発ができれば幸いです。
 ヒポクラテスの時代から認められる感染症のニーズは、現代においても変わりません。それどころか、新興・復興感染症なども加わり、さらには、人類の科学の発展とともに発生してきた耐性菌などを含め、感染症には、医学会のみならず、一般社会からもますます注目が集まっております。これらの期待に応えるべく、神奈川県感染症医会を通じて、神奈川県の感染症診療のレベルアップができるように最善の努力をして参りたいと思いますので是非とも皆様方のご支援、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

前会長 小田切 繁樹

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 此の度、本医学会事務局がホームページを立ち上げました。会員の皆様におかれましては、これを大いに利用して頂くと共に、本会の更なる発展に向けての忌憚のない、建設的な御意見を述べる場としても活用されることを願っております。
顧みますと、本医学会の全身である神奈川県感染症研究会は、小生の恩師である福島孝吉先生が中心となり、県内五大学(後に六大学)の感染症専門の教授等と連携して、感染症に興味のある人々が合する、言わば感染症の同好会的な勉強の場として昭和52年1月に設立され、春と秋の年2回、本同好会的学術集会を行ってきました。
其の後、社会情勢の変化により、公正取引委員会の指導もあって平成11年度から神奈川県医学会の一分科会として現在の神奈川県感染症医学会へと衣替えをしました。
学術集会の名称は変っても、引き続き春と秋の年2回の開催は堅持され、今秋9月には第72回目の開催(聖マ医大 総合診療内科教授 松田隆秀会長主宰)の予定であり、実に36年間の長きに亘り継続して活発に活動を続けております。
東京でも東京地区感染症懇話会がありましたが、本会の会員は日本感染症学会と日本化学療法学会の会員に限られており、当神奈川県感染症医学会のように感染症に興味を持つ医師やパラメディカルな人たちも会員となれば自由に参加できる制度とは大きく異なり、短年で解消してしまいました。
固より、感染症と抗菌薬療法は言わば、表裏一体の関係にあります。1940年代のフレミングによるペニシリンGの発見から本格的に抗菌薬療法時代が幕開けし、その後は活菌活性の優れた抗菌薬が相次いで診療現場に供給され、その優れた治療成績から、我が国では、欧米とは異なり、感染症は殆ど克服された疾患に至ったとの大変な愚を犯した一時期がありました。
一方、抗菌薬と対峙する微生物側も、‘生物の環境への適応現象’‘種族保存の法則’などの自然界の摂理に基づき、抗菌薬投与下という彼らの生死にかかわる苛酷な環境下で「生き残る術」を模索しながら“抗菌薬の耐性化”という適応現象を獲得しました。
更に空路交通網の発展・普及により国の内外からの出入は急増し、これに伴って、新興感染症、再興感染症、新型微生物、新耐性菌などが随伴して進入するようになりました。
以上を要約しますと、①優れた抗菌薬の成果によるコンプロマイズド・ホストの増加、②微生物の耐性化の拡大・蔓延、③空路交通網の発展による新興・再興感染症、新型微生物、多剤耐性菌の出現などが相俟って難治性感染症例の着実な増加、院内感染の問題、新興感染症・新型微生物・新耐性菌などの侵入対策など、感染症における対処すべき問題は山積化し、我が国の嘗ての一時期の、感染症は殆ど克服された疾患に至ったとの超楽観的認識は今や完膚無きまでに粉砕されました。
斯様な現況に対しまして、本医学会は、上記の国の内外における感染症全般の主要な全事項の掌握、と共に本県における感染症全般を掌握し、かつ県下の医療機関における問題ある症例群(各地区の医師会との勉強会を通じて)を適切かつ可及的速やかに対処する、言わば本県下感染症全般にかかわる番人的組織のコアとしての役割を果たしていくべきであると考えております。
其の実現の第一歩として、現時点の、ⅰ)感染症学に意欲のある若手医師等を育成すべく、年2回の医学会で発表した最優秀演題の発表者に奨励賞を授与する制度の設立、ⅱ)今や感染症学は再び陽の当たる領域となり、若年医師群による感染症勉強会が定期的活発に行われている現況、などは更なる発展に向けての離陸準備中の時期といえましょう。
本会のホームページ開設も将来の飛躍に向けての助走の第一歩であり、今後も継続的に本会会員に向けての利便性を一層高める情報などを提供しつつ、目標は国内・外の感染症全般の主要な全事項を掌握しつつ、本県に於ける感染症全般にかかわる番人的組織のコアの役割を果たすことにありますので、会員の皆様も、その目標に向かって意欲的に研鑽を継続されることを心より願って止みません。