歴代当番会長 – 第89回

第89回神奈川県感染症医学会へのお誘い

当番会長 梅澤 和夫

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 学会員の諸先生に於かれましては益々御健勝のこと存じます。
 この度、第89回神奈川県感染症医学会の当番会長を賜りました。微力ながら大会の成功に向け精進いたします。
 2019年1月16日に我が国で最初のCOVID-19患者が神奈川県で確認され、2月にはダイアモンドプリンセス号のクラスター対応を行いました。その後も感染波と表現される急激な患者増加を繰り返し、感染防御は病院のみならず人類共通の基本行動になりました。 
 感染対策による様々な行動抑制を自由や権利の侵害と言う人がおりますが、それは誤りであると私は考えております。日本国憲法第12条、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」。自由や権利は非常に脆いもので、それを守るために日夜努力が必要です。COVID-19に罹患した場合は、生命権、財産権など基本的人権が脅かされる重大な問題です。また、COVID-19を拡大させないことは人類共通の公共の福祉であり、感染対策は自由と権利と守り、公共の福祉のための国民の責任であると考えております。
 病院内の感染制御では感染対策室を中心にリーダーシップを発揮しなければなりません。しかしながら、様々な方の行動や言動から指示、命令と言った上から目線の態度が気に掛かるのは、私の気のせいでしょうか。感染防護行動を行うのは現場の方々であり、現場と患者さんの安全を確保するために周辺との調整、交渉を行うのが感染対策室の本職と私は考え、働いてまいりました。感染制御とはオーダーではなくマネージメントが主体であり、感染対策室は、裏方の仕事が主たる職務です。マネージメントなき行動は「無秩序」「無責任」であり、組織としての体裁をなさない行動で、許されるものではありません。
 マネージメンターとしてPost COVID-19も見据えながら、感染制御学、感染治療学など感染症を総合的に俯瞰できるように精進したいと考えております。
 第89回神奈川県感染症医学会におきましては、活発な討論を通じ、感染症を総合的な観点から議論を行い、学才を高めたいと考えております。
 学会員の諸先生に於かれましても、活発なご議論の程、宜しくお願いいたします。
 今後ともご指導、ご鞭撻の程、お願い申し上げます。

東海大学医学部付属病院 院内感染対策室
東海大学医学部総合診療学系 救命救急医学
梅澤 和夫